KATAHIRA WORKS

トップページ

概要

製品

コラム

試作品




■コラム

001. 2018/07/24

KW-NLA1 Nutubeラインアンプの設計 








初回のコラムになります。
製品ページで記載していることは、委託させて頂いていることもあり、
適切で正確な情報を書かなくてはなりません。
対して、こちらではざっくばらんに検討中であったり、多少不正確でも分かりやすい情報を載せたり、
もしくはオーディオと全く関係ないことでも書いていこうかと考えています。






その1回目のコラム。
自分用には表面実装の部品を使ったり、設計としてはおおざっばであるものの、
調整幅を持たせておいて、使用する環境に合わせこむことが出来るNutubeのラインアンプを作って、
自作アンプに組み込んでいました。
その音がなかなか良かったので、もっと汎用的で使いやすい回路を作成して、
配布出来たらと考えていました。


実際に回路図を引いて、新たにデータシートを見てみると、
真空管なりの色々と面白い特性が分かって(思い出して)きました。
初めてこのデバイスに触れる方にとっては良い情報になるのではと考え、
評価を行っている最中にあるKW-NLA1 Nutubeラインアンプ(バッファアンプ)の
設計視点での手順を記載します。






まず、Nutubeとはなんでしょうか? という話。
Nutubeは電子楽器を製造、販売しているメーカー、KORGが電子デバイスメーカーである
ノリタケ伊勢電子と共に開発した、蛍光表示管の技術を応用した真空管です。


自作オーディオをやっている以上、真空管アンプには興味がありました。
ただ、試作品のページに完成写真だけ載せていますが、
Nixie管含め200V等の高圧を使うので敷居が高い。
対して、広義の真空管である蛍光表示管は12V程度で作れるので、
電源設計に頭を捻る必要もなく楽でした。
更に単純に新規のオーディオデバイスというのは面白そうだと思い、
データシートを読み込む作業を開始しました。






データシートを読み込むといっても、いや、読まなくても、
Nutubeの製品サイトにはとても親切な使用ガイドというページがあり、
どんな抵抗値でどのくらいの電流を流し、どのような回路を組むと良いよ!
というような情報が記載されています。


なので、参考回路例通りに作成してもNutubeの音色を楽しむことが出来ます。
ただ、それだけではNutubeの理解には不十分ですし、
参考回路以外の応用例が思いつかなくなってしまいますので、1から順に。








乱暴な言い方をしてしまえば、Nutubeのような3極管の真空管はFETみたいなもので、
FETで言うところのゲートであるグリッドを叩いてやれば、
出力(プレート電圧)が取り出せます。
言葉だけでは分かりづらいので、このことをデータシートのEa-Ia特性のグラフを抜粋して見てみます。









図に記載されているIaがプレート電流、Eaがプレート電圧、Egがグリッド電圧です。
既に赤い線が引いてあるのですが、これは電源電圧が12V、
アノード負荷が330kΩの時のロードラインです。


線の右端はEaが12Vの時で抵抗の両端には電圧がかかっていない状態。
左端は逆の条件で、プレート電圧が0Vであり、Iaは 12V / 330kΩ ≒ 36.36uA となります。
その両点を結んだ線です。


ロードラインと各電圧時のEgとの曲線には交点が生じまして、
これにてグリッドに入力する電圧と出力に現れるプレート電圧の関係が分かります。


上記図の場合、Egが4.0Vの時には2.3Vが出力して、0Vの時には12Vだから、
入力で2Vのバイアスを掛けてやって、出力側はDC成分をカットしてやれば、
入力±2Vで出力±4.9Vの増幅が出来る! と一見思いますが、




出来ません。オーディオ的には




なぜ"オーディオ"と限定したのかというと、
ギターのエフェクタとか歪みを楽しむものならOKです。
それなりにリニアな特性を求めようとするとだめです。
入力に±2.0Vの正弦波を与えて見た時の波形をグラフを作って確認してみます。

















Egを0.5V刻みで変化させた時のEaをEa-Ia特性のグラフから読み取って作ったグラフです。
見た通り、上は12V、下は2V付近で頭打ちして歪んでしまっています。
これでは最大入力を±2.0Vとした場合にはオーディオとしては使えません。


ならば、どの入力範囲までなら使えるのか?

















今後はEgを4.0〜0Vまで変化させた際のグラフです。
こう見ると、3.0-2.5Vのあたりや1.5-1.0Vの時点で線形性は失われてしまっています。
リニアに変化しているのは2.5-1.5Vの範囲だと分かります。




ここで、歪みを極力抑えるべく、オフセットが2Vで±0.5Vの入力を行う場合の波形を確認します。

















やっと正弦波の入力に対し、正弦波と言える出力となりました。
ざっくりですが、Vp-pが5.5Vになりますので、
±0.5Vの入力に対し、±2.8Vの増幅が出来たことになります。








細かいところでは違いますが、おおよそ±0.5Vの入力に対し、
±2.8Vの増幅を行うラインアンプというのがKW-NLA1の仕様です。


ライン入力は2Vrms(±2.82V)ですので、これを±0.5V程度にまずはレベルシフト。
次にグリッドバイアス抵抗値を330kΩにして14dBのゲインを得て±2.8Vへ。
ここまでですと、入力と出力が1:1となり理想的なラインアンプですが、
実際にはインピーダンスを落とすためにバッファとしてのソースフォロワを入れていますので、
少し振幅が小さくなります。








なんとなくNutubeの動作は伝わったでしょうか。
このNutube、低電圧駆動が売りの1つであり、ヘッドホンアンプの需要が大きいようなので、
世間ではこれ以上の電圧出力は求められていないように感じています。
パワーアンプとして使う時もあくまでラインアンプのようにNutubeを通した上で、
別のドライブ段と電流増幅段を設けてパワーアンプとしているケースが目立ちますし。


ですが、このNutube、動作電圧範囲は5〜80Vです。
真空管と呼ぶに相応しい、高電圧側を使うとどうなるのか?
少し余裕を持たせて、Vcc=70Vにて動作点を導いてみます。

















Nutubeのみで±16Vの増幅が出来るプリアンプを作ることができますね。








Comming soon ……?











定本 OPアンプ回路の設計―再現性を重視した設計の基礎から応用まで

新品価格
¥2,935から
(2018/9/4 20:39時点)

定本 トランジスタ回路の設計―増幅回路技術を実験を通してやさしく解析

新品価格
¥2,307から
(2018/9/4 20:40時点)

定本 続トランジスタ回路の設計―FET パワーMOS スイッチング回路を実験で解析

新品価格
¥2,831から
(2018/9/4 20:40時点)


COPYRIGHT (C)2017 KATAHIRA WORKS