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■コラム

004. 2018/09/02

トランス使用による直流電源の生成法 









新たにトランスを使う機会がありましたので、使用方法をご紹介したいと思います。




自作オーディオを始めるにあたって、高周波ノイズを避ける為にトランスを使うことが多いと思います。
ただ、ACアダプタみたいにトランス単体をコンセントに接続すれば、
規定のDC電圧を出力してくれるわけではなく、
敷居が高い印象があるかと思います(自分自身の経験から)
とはいえ、正負の電源を作ろうとした時には、
センタータップ付きのトランスを使った方が早いと思いますので。














今回使用するのはTOYOZUMI社製のHT701です。
こちらは1次が100V系、2次が70V系となります、
先程、センタータップで正負電源とか、初心者向けのように仄めかしておきながら、
あまりオーディオではあまり使う機会がなさそうなものですが^^;
接続が多少変わるだけなので参考にはなるかと思います。




記事TOPの画像を参照して接続を確認してもらいたいのですが、
トランス下部の100V,110Vと書いている方がコンセント側です。
日本の電源は100Vなので、0と100Vのところにリード線を接続します。
確か、韓国の電源は110Vなので、そういった国々で使用する際には110Vの方へ。




とはいえ、1次側と2次側の巻線比で電圧が変わるだけなので、
接続を間違ったところで、上部に記載されている電圧通りに出力されないというだけです。
ちなみに今回は整流した際にレギュレーターを通して80V以下となる電圧を使いたいので、
上部に関しては0Vと60Vのところに接続します。




なぜ、80Vに近い70Vのところに接続しないかというと、トランス記載の電圧は実効値で、
Vmaxで言うと60Vは60×√2となり、84.6Vとなるからです。
今回整流後に接続するレギュレーターのドロップ電圧は5V程度ですので、
負荷が小さい場合にはちょうど80Vから使える計算です。













全体の配線が完了しました。
1次側がコンセント→電源スイッチ→ヒューズ→トランスとなっています。
適時、インラッシュカレントを防ぐ、スパークキラーを入れてください。
スイッチの損耗やヒューズ切れを防ぐ為です。









2次側は以前書いたように、0Vと60Vから配線を出しています。
また、危ないので使用しない端子は絶縁を行います。
他の方々はこの写真よりも、もっと丁寧に行われているかと思います…













コンセントからトランスの2次側まで配線が終わったところで、
整流・平滑回路へ接続して交流を直流化します。
電源品質を考えるのであれば、スイッチング電源のスパイクをいかにして取り除くかを考えるより、
こちらを選んだ方が早いと思っています。








ここで画像だけですと接続は分かるものの、電気的な流れが分からないかと思いますので、
製品ページには載せていない正電源のみを出力する、
ブリッジ整流回路の回路図を掲載させて頂きます。





概略図ではないので分かりづらいかもしれませんが、
今回で言うとトランス2次側の0VがCN1のV-へ、60VがV+へ繋がれたことになります。


その交流はD3ダイオードブリッジへ繋がり、整流されます。
この時点では出力にはリップルが含まれています。


整流された電圧はC1,C2へと流れ、コンデンサにより平滑されます。
この回路で言いますと、平滑されただけの非安定化電源の状態から
更に三端子レギュレータに繋がり、安定化電源となります。




対して正負電源を生成したい時は、ブリッジ整流回路による正負電源回路を用います。
当製作所で言うところのKW-RC1KW-RCV1です。








続いて、ヒューズの選定です。
トランスのヒューズはスピーカーや各回路の保護というよりも、
もっと重大な機器の火災なりを防ぐものですから、
想定した電流よりも異常な程大きい電流が流れているような時に切れてもらって、
電源供給を止めてもらう役割を持っています。




具体的な例を持って、色々簡略化して計算をしてみますと、
想定機器がヘッドホンアンプ内蔵のDACであり、
トランスの2次側に500mAも流さないとすると(適当に設定しています)
2次側は15Vの0.5A。つまり、15V × 0.5A = 7.5VA
1次側は100Vなわけなので、変圧比等から考え、7.5VA / 100V = 0.075A
つまり、75mA流れることとなります。




機器は通常使用時でも電流の変動はあるものなので、
75mAの2倍程度であれば異常電流と設定すると、
150mAとなり、市販品から選ぶと、近似で200mAのヒューズであれば、
充分に安全に使用できるかと考えられます。




同様に10W程度のモノラルパワーアンプであれば、
15V × 2A = 30VA になり、30VA / 100V = 0.3A
0.3A ×2倍 = 0.6A(≒1A) 設定になるでしょうか。




実際には電流量は平滑後、もしくは安定化した後に流れる電流から計算することとなります。
整流回路の効率で、半端整流では40%、ブリッジ整流で60%、両波整流で80%と聞いたことがあります。
その点を考慮してください。








更に上で少し触れたスパークキラーについてです。
こちらは製品を出されているOKAYA社のウェブサイトに詳しい記事が載っていますので、
ご参考にされてください。

・スパークキラーの選定方法 その1
・スパークキラーの選定方法 その2




要点だけ押さえますと、

・負荷の両端への接続はDCでもACでも有効
・接点の両端に接続はDCのみ




C-R定数の選定については、

・抵抗値Rは120Ωが標準

静電容量C[uF]は定常負荷によって異なり、
500mAであれば、C = I[A]^2 / 10 ※10〜20
よって、 C = 0.5 × 0.5 / 10 = 0.025uF ≒ 0.033uF

2Aであれば、
C = 2 × 2 / 10 = 0.4 ≒ 0.3uF(もしくは0.5uF)
となりそうです。




カタログを見ますとOKAYA社製で100V対応かつオーディオで使いやすそうなのは、
SもしくはSBシリーズとなり、型名は"S120033"や"S1203"となるようです。




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