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■コラム

005. 2018/09/17

KW-NPA1(仮) Nutubeプリアンプの試作 








コラム1の最後に「仕様上可能で面白そうですね」という風に書いていた件になります。
ハリウッド映画なんかを見ているとああいった予告がなされていて、
その1作目が転けると、その予告は実現しない(笑
うちは興味があることはやってみる方針です。




と前書きを書いたところで前回、何が面白そうだと書いたのか。
それはNutubeのデータシートを見ると、定格が5〜80Vと書かれている。
使用ガイドには保証外と記載の上、80V以上でも瞬時に破損はしないともかかれています。




Nutubeの売りの1つが低電圧でも動作するということなので、
6Vなり、9Vなり12Vなり…低電圧で動作させ、ヘッドホンアンプやエフェクタとしての
使用例が多数を占めて、ネット上で掲載されていたように思います。
それでは逆に高電圧側を使うとどうなるのか、というのが今回のテーマです。
80Vでも良いのですが、少し余裕を見て70V、
アノード負荷が330kΩの時のロードラインを引いてみました。









このグラフで読み取れたことは、線形性が保てない縦線の両端は切り捨てるとすると、
Nutubeのみで±16Vの増幅が出来るプリアンプを作ることが出来そうだということです。




ということで、試作品の設計を行いました。
高電圧を使うということもあり、需要が無さそうな物となりそうでしたので、
細かな確認は行わず、スピード重視の設計です。
↑許容範囲内というか、想定内でしたが多少不具合が出ました。後述します。








まずは電源です。
KW-NLA1にちかい形で作り上げる場合、Nutubeに必要な電源は、
アノード電圧とバイアス電圧とフィラメント電圧です。
製作済みのKW-RCV1みたいな作りとするならば、
電源基板に放熱板を2個取り付けることが出来ますので、
こちらに電源系統を2つ持たせ、プリアンプ側の基板には電源部を持たせない作りに出来ます。




トランスとレギュレータのラインナップを眺めていたら、ちょうど良さそうな製品がありました。
TOYOZUMI社製のHT7005とTI社製のTL783CKCSE3です。
前者は50〜70Vまで5V刻みの出力を持っていまして、
60Vを整流すると80Vまで使えそうです。ここら辺の話はコラム4で。
後者は入出力電位差が125Vまで使えるレギュレータで、
一般的な真空管アンプには使えませんが、
Nutubeには打って付けの可変三端子レギュレータになります。








そして、回路設計して完成したものが、製品ページまで作り終えたKW-HRC1です。













続いて、Nutubeプリアンプの基板も完成しまして、
部品を実装して火入れを行ってみました。
すると、KW-NLA1の高圧対応版なので問題なく動作したものの、多少の問題が見つかりました。




1点目が70Vと3.3Vで動作させようとした為、電源であるKW-HRC1の
電源2系統目のヒートシンクが結構熱くなることです。
フィラメントに流す電圧なんて数十mAだから大したことないと思っていたのですが、
70Vを3.3Vに落とすなんて無茶なことをやっているので、さすがにというところでした。
仮にBOXに組むとすれば、ヒートシンクを筐体に接地すれば良いので問題なし。




次にNutubeの出力を受けるソースフォロワのFETです。
こちらこそフィラメント以上に電流を流さないので問題ないと思っていたら、
さすがの70Vの電圧とそれなりにあるON抵抗ということもあり、
動作上問題ない温度とはいえ、触ってみると結構熱い…。
ということで、ヒートシンクをつけることにしました。













こちらのヒートシンクはコンデンサの隙間のFET上に取り付けなくてはならないので、分割します。













こんな感じです。右側を使います。
と、さらりと書きましたがここまで結構大変でした^^;
砥石カッタで切断しようとするが上手くいかず、
ダイヤモンドカッタとかを使ってなんとか切断に成功。













取り付けの画像がこちらです。
ちょうど良いサイズですね。
この基板は自分の為の試作用ですので問題ありません←フラグ
動作時にヒートシンクを触るとほんのりと温かい感じです。








そして、Nutubeプリアンプの再火入れ!









画像でも分かると思うのですが、とんでもなくNutubeが発光しています!
12VをかけるKW-NLA1だと暗闇であればはっきりと光っているのが見え、
室内灯下だとぼんやりと分かる程度です。
ですが、こちらは室内灯下でこの明るさ! 70Vの恐ろしさ。








ここで出力波形を確認してみました。
帯域の狭い簡易オシロですので、波形は参考程度に。




まずは入力波形です。









KW-DAC1及びKW-IVL1の出力でして、
2Vrmsを入力しています。




次に出力波形。









2Vrmsをそのまま入れると歪みますので、
Nutubeプリアンプ内でレベルシフトを行い、
美味しい範囲のみを入力し、増幅させた波形です。




12V入力のKW-NLA1では±2.8V以下の出力しか出来なかったのですが、
70Vをかけることで±12Vの出力が可能となりました。
このプリアンプを電圧増幅段として使用し、後段に電力増幅段をつければ、
純粋にNutubeによって電圧増幅したパワーアンプを作ることが出来ます!








ということで、電流帰還アンプであるKW-CPA1を
バッファとして使用するよう帰還抵抗を変えて、Nutubeプリアンプの出力に接続してみました。
すると、ここまで電源もプリアンプの基板も作っておいて期待していなかったというと嘘になりますが、
思った以上に良い音で驚きました。




単純に解像度で言えばKW-CPA1のみのパワーアンプが一番良いと思っています。
でも、こちらも良い音なんですよ。
そんなに解像度で劣っているわけでもなく。
官能的な部分は説明しづらいのですが。








良い音が出てしまった以上、いい加減だった熱設計の部分と、
耐圧のみを気に掛け、音質を突き詰めなかった部分を見直し、
バージョンアップした基板を作ることにしました。
興味がある方は今しばらくお待ち願います。




あと、この回路は3極管シングル増幅回路というのでしょうか。
Nutubeを2個使って、差動増幅とプッシュプルを組み合わせた回路も面白そうかと思います。





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